音読、文章の内容を記憶する読み方について解説をしています。
ここでは「方針・指針・考え方」「つまずき」「学力基盤の構築」「トレーニング・レッスン」「学習アドバイス・ご相談」の5つの記事に分けてまとめています。

読み取る力


【方針・指針・考え方】

私たちがこどもの「読解力」を育むにあたり、「すらすら読み」ができることを第一の目標にする必要があります。そして、「すらすら読み」ができるようになれば、内容の理解や内容の記憶など、より高度な読解力を育むステップに移行できるでしょう。

文部科学省のホームページには「音読は、正確・明晰・流暢(正しく・はっきり・すらすら)を目標とする」とあり、「すらすら読み / 回数記録」の箇所では次のように書かれています。

・文学的文章・説明的文章とも、すらすら読めることが、その後の学習の前提である
・すらすら読めること自体が国語学力である
・すらすら読めるようにさせる簡単で確実な方法は、繰り返し読ませることであり、その方法を工夫しなければならない
・何回読んだかを記録させるのは、繰り返し読むことの動機づけとなる

https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/clarinet/002/003/002/007.htm

私たちが文章を読むとき、次の一文に視点が移ると同時に、その前に読んだ一文をできる限り記憶しておかなければ、内容を理解して読み進めることはできません。私たちは、このような短期記憶の作業を脳内で繰り返しながら、段落や文章全体の内容を理解していきます。また、文章を正確に読み、内容を正確に理解するためは、過去の経験や知識も必要となります。過去の情報や知識を脳内から取り出す作業には「ワーキングメモリ」の働きが深く関わっています。「ワーキングメモリ」自体に働きかけるトレーニングを積むことも、読解力を育む上で欠かせない視点です。

さらに、文章を読む練習を繰り返すことで、段落ごとの趣旨を理解し、文章全体の論理展開を理解して思考するという高度な読み方ができるようになってきます。これは主に入試で求められる読み方です。

このように、文字を目で追い、内容を理解ながら文章を読むという作業は、脳内処理の観点からも非常に複雑で高度なものです。こどもの読解力を育むためには、つまずきの原因をひも解きながら、こどものできることを増やし、達成感を得ながら取り組ませることが重要です。これが「読解力を育む基本的な考え方」です。

こどもの読解力を育むにあたり、多くの学習方法が提示されていますので、上記と合わせて参考にしていただき、時間はかかるかもしれませんが、こどもの現在位置を起点に学習方法を見直すこともお勧めします。

読み取る力


【学力基盤の構築】 

小学生は「読解力の学力基盤」として、下記の全てができている状態が挙げられます。

  • すらすら読みができる
  • 読む速度は遅さが気にならない程度
  • 一定量の文章が記憶できる、理解できる
  • 文章全体をある程度記憶でき、理解できる

この文章を音読させて、気になる点がなければ、次の問いを出してください。その際、本文はこどもに見えないよう隠してください。

「さんちゃんは、なにがしたくてたまらなかったのですか」

問われている内容を理解し答えることがしっかりとできていることを前提に、さらに読解力を高めるためには、こども自身に「今、自分が持っている読解力」を数字で示すことも重要です。自分が持っている力を数字で可視化することにより、こどもも指導者も同じ目線で改善策を考えることができるからです。

  • 文章を理解できるスピードで読む速度


    (1分間の読む速度はコンピュータで計測できます)
  • 正答率
  • 本文を読み、全問を解くまでに


    何度往来したか

試験などでは、制限時間内に文章を読み、設問に答えることが求められます。本文と設問を何度も行き来するという読み方は効率が良いとはいえません。本文にある情報をできる限り多く記憶し、内容を理解しながら読み進める必要があります。

昨今の定期試験、実力テスト、入試問題では、読み取った内容をもとに記述をする形式が増えています。書く時間を確保するためには、できる限り効率よく読み取ることが求められますので、日々の学習において、「自分が持っている読解力」を客観的な数字で確認しながらトレーニングを積むと良いでしょう。

<参考>

読み取る力


【つまずき】

こどもの読解力を育むにあたり、「つまずき」が気になる方も多いでしょう。
ここでは「つまずき」について、一般社団法人ワーキングメモリ教育推進協会理事の野瀬さんが解説をします。

読解の学習は文章を読んで理解する学習のことです。
ここでは「読む」と「読解」を分けて考えたいと思います。それは「読む」ことはできても、設問に解答したり、文章の意味を理解できないこどももいるからです。
読解学習をする場合、1文字ずつ文字を音に変えて、それをワーキングメモリに留めておき、同時に音声の組み合わせから「意味」を考える必要があります。この「①文字→②音声→③意味」のプロセスの➀②がまさに「読む」で、音読(黙読)なのです。音読(黙読)が出来ないと、③意味を考えるなどの段階には進めません。しかし、①②の音読(黙読)ができるからと言って、③ができるかはまた別の段階となります。

まず、「方針・指針・考え方🔗」の章で記していた「音読」から解説します。

学校の教科書などを音読させてみて、こどもがどこでつまずいているのかを見極め、それに応じた箇所から導くことが重要です。

文字が読めなければ読解はできませんが、他の人に読んでもらえば意味が分かるこどもがいます。

「読めない」場合、読解学習だけでなく、大人が先に見本を見せ、その後こどもに読ませるなど、かな文字や漢字など文字に対応する音を覚える読みの練習から始めましょう。単に対応する文字を暗記させるだけでなく、こどもが長期記憶している情報や知識、または絵や図などを活用すると良いでしょう。

「ひろい読み・読みが遅い」「読めるが意味がわからない」場合、

読めない文字はないが、字の読みに時間がかかると直ぐに意味を捉えることができなかったり、知っている語彙が少なくて、文字は読めても意味が分からず読解できなかったりということもあります。この場合、知っている語彙の量が少ないことが要因かもしれませんので、文章に出てきた語彙の意味を確認しながら読解学習を進めるようにするとよいでしょう。

複数の単語の意味を関連付け、まとまった1文として理解(記憶)できている場合や文章全体を理解できている場合、5W1Hなどを活用して文、文章全体の内容を確かめるとよいでしょう。

<参照>
note「文章読解が苦手」な理由はワーキングメモリのタイプでわかる

<参考資料>

✐ワーキングメモリを生かす効果的な学習支援 湯澤正通・湯澤美紀・著

✐教室の中のワーキングメモリ 弱さのある子に配慮した支援 河村暁・著

✐ワーキングメモリに配慮した「読み」「書き」「計算」支援教材 湯澤正通・著

✐ワーキングメモリがぐんぐんのびるワークシート 湯澤正通・著

読み取る力


【トレーニング・レッスン】

ご自宅でできるトレーニング教材は学校の教科書が最適です。こどもの「現在位置」を知る機会と捉えて、宿題の音読課題を有効に使うことをお勧めします。

  • すらすら読みができているか
  • 読む速度は遅さが気にならない程度か
  • 一定量の文章が記憶できているか、


    理解できているか
  • 文章全体をある程度記憶でき、理解できているか

<参照>
読解力 学力基盤の構築🔗

こどもができていることを認めながら、こどもの今後の課題を確かめ、正しいサポートを行うことで、こどもの読解力の基盤が作られていきます。気になる点は都度指摘するのではなく、まずは学習サポーターである大人の意識に留めておきながら、こどもに適したサポートを日々継続するのが良いでしょう。

塾などで配布されるテキストも同様に活用するとさらに良いでしょう。設問が正解であったか否かは別として、せっかくの良質な文章を大切に、しっかりと読み取ることができているかを確かめることをお勧めします。

<お薦めのレッスン>
脳内のメカニズムにはたらきかけるレッスンや教材をご紹介します。いずれも自宅から参加できます。

<法人様向けサービス>

Contactよりお問い合わせください。

読み取る力


【学習アドバイス・ご相談】 

一般社団法人ワーキングメモリ教育推進協会理事・株式会社インフィニットマインド上級インストラクターの野瀨まなみが、お子さまの「読み取る力」に関するご相談に個別にご対応します。

30分 5,500円(税込)

ご相談担当

一般社団法人ワーキングメモリ教育推進協会理事
株式会社インフィニットマインド上級インストラクター

上級インストラクターの野瀨です。
お子さまの“学びの個性”を把握・理解し、個性に合わせた教育を行えば、 学習の筋道や速さが異なっていても、お子さまは、学びの喜びを感じ、自信を持って学習の道を歩み、ゴールに到達することができます。
こどもの「読み取る力」を育む具体的な学習のアプローチなどご相談事はお気軽にお問い合わせください。