「聞き取る力」が読解力に深く関わっていることはあまり知られていません。
ここでは、「方針・指針・考え方」「つまずき」「学力基盤の構築」「トレーニング・レッスン」「学習アドバイス・ご相談」の5つの記事に分けてまとめています。

聞き取る力


【方針・指針・考え方】

文部科学省のホームページでは、学年区分により、【目標】【内容】について次のように書かれています。

[第1学年及び第2学年]

1 目標
(1) 相手に応じ, 身近なことなどについて、 事柄の順序を考えながら話す能力, 大事なことを落とさないように聞く能力、話題に沿って話し合う能力を身に付けさせるとともに、進んで話したり聞いたりしようとする態度を育てる。
(2) 経験したことや想像したことなどについて、 順序を整理し、 簡単な構成を考えて文や文章を書く能力を身に付けさせるとともに進んで書こうとする態度を育てる。
(3) 書かれている事柄の順序や場面の様子などに気付いたり、 想像を広げたりしながら読む能力を身に付けさせるとともに、 楽しんで読書しようとする態度を育てる。

2 内容
A 話すこと・聞くこと
(1) 話すこと・聞くことの能力を育てるため、 次の事項について指導する。
 ア 身近なことや経験したことなどから話題を決め、 必要な事柄を思い出すこと。
 イ 相手に応じて, 話す事柄を順序立て,丁寧な言葉と普通の言葉との違いに気を付けて話すこと。
 ウ 姿勢や形、声の大きさや速さなどに注意して、はっきりした発音で話すこと。
 エ 大事なことを落とさないようにしながら、 興味をもって聞くこと。
 オ 互いの話を集中して聞き、話題に沿って話し合うこと。

(2) (1)に示す事項については、 例えば、 次のような言語活動を通して指導するものとする。
 ア 事物の説明や経験の報告をしたり, それらを聞いて感想を述べたりすること。
 イ 尋ねたり応答したり, グループで話し合って考えを一つにまとめたりすること。
 ウ 場面に合わせてあいさつをしたり、 必要なことについて身近な人と連絡をし合ったりすること。
 エ 知らせたいことなどについて身近な人に紹介したり, それを聞いたりすること。

[第3学年及び第4学年]

1 目標
(1) 相手や目的に応じ、 調べたことなどについて、 筋道を立てて話す能力、話の中心に気を付けて聞く能力、 進行に沿って話し合う能力を身に付けさせるとともに、工夫をしながら話したり聞いたりしようとする態度を育てる。
(2) 相手や目的に応じ、 調べたことなどが伝わるように、 段落相互の関係などに注意して文章を書く能力を身に付けさせるとともに、工夫をしながら書こうとする態度を育てる。
(3) 目的に応じ、 内容の中心をとらえたり段落相互の関係を考えたりしながら読む能力を身に付けさせるとともに、 幅広く読書しようとする態度を育てる。

2 内容
A 話すこと・聞くこと
(1) 話すこと・聞くことの能力を育てるため、次の事項について指導する。
 ア 関心のあることなどから話題を決め、 必要な事柄について調べ、 要点をメモすること。
 イ 相手や目的に応じて、 理由や事例などを挙げながら筋道を立て、 丁寧な言葉を用いるなど適切な言葉遣いで話すこと。
 ウ 相手を見たり、言葉の抑揚や強弱、間の取り方などに注意したりして話すこと。
 エ 話の中心に気を付けて聞き、 質問をしたり感想を述べたりすること。
 オ 互いの考えの共通点や相違点を考え、 司会や提案などの役割を果たしながら、 進行に沿って話し合うこと。

(2) (1)に示す事項については、 例えば、次のような言語活動を通して指導するものとする。
 ア 出来事の説明や調査の報告をしたり、 それらを聞いて意見を述べたりすること。
 イ 学級全体で話し合って考えをまとめたり、意見を述べ合ったりすること。
 ウ 図表や絵、 写真などから読み取ったことを基に話したり、聞いたりすること。

[第5学年及び第6学年]

1 目標
(1) 目的や意図に応じ、 考えたことや伝えたいことなどについて、 的確に話す能力、 相手の意図をつかみながら聞く能力、 計画的に話し合う能力を身に付けさせるとともに、適切に話したり聞いたりしようとする態度を育てる。
(2) 目的や意図に応じ、 考えたことなどを文章全体の構成の効果を考えて文章に書く能力を身に付けさせるとともに、適切に書こうとする態度を育てる。
(3) 目的に応じ、 内容や要旨をとらえながら読む能力を身に付けさせるとともに、 読書を通して考えを広げたり深めたりしようとする態度を育てる。

2 内容
A 話すこと・聞くこと
(1) 話すこと・聞くことの能力を育てるため、 次の事項について指導する。
 ア 考えたことや伝えたいことなどから話題を決め、 収集した知識や情報を関係付けること。
 イ 目的や意図に応じて、 事柄が明確に伝わるように話の構成を工夫しながら、 場に応じた適切な言葉遣いで話すこと。
 ウ 共通語と方言との違いを理解し、 また、 必要に応じて共通語で話すこと。
 エ 話し手の意図をとらえながら聞き、 自分の意見と比べるなどして考えをまとめること。
 オ 互いの立場や意図をはっきりさせながら、 計画的に話し合うこと。

(2) (1)に示す事項については、 例えば、 次のような言語活動を通して指導するものとする。
 ア 資料を提示しながら説明や報告をしたり、 それらを聞いて助言や提案をしたりすること。
 イ 調べたことやまとめたことについて、 討論などをすること。
 ウ 事物や人物を推薦したり、 それを聞いたりすること。

これらを基本的な指針として、言語領域に関わる「国語」において、こどもの四技能「聞く、話す、読む、書く」の中の「聞く力」を育むことが「話す・読む・書く」にも関わることを理解することが重要です。

聞き取る力


【学力基盤の構築】

福岡県久留米市にある名門私立中学校である久留米大学附設中学校の国語科の入試問題では、「聞き取り問題」が出題されています。これは、先生の話をしっかり聞き取ることができる生徒に入学してほしいという学校のスタンスであり、また、趣旨を次のように掲げています。

入試は「文字言語」に偏った試験であるので、「黙読・速読による記述」に傾くのは仕方がないが、「音声言語による受容と表現」も国語教育から欠落させてならないのは自明である。
本校では、面接試験がなく、「話す力」を直接試すことはできないので、「聞く・書く」という形で「聞き取り」を考えるのは、本校の国語入試における言語世界の拡大を意図する。

左の「国語の四技能」のサイクルを見ていただくと、四技能の一部を担う「聞く力」は、「ことば・語彙力」を育み「読解力」や「書く力」にもつながる非常に重要な力であることがお分かりいただけると思います。

左のサイクルは一人の場合ですが、2人以上とコミュニケーションを取る場合は他人の言っていることをまず「聞き取り」その内容をふまえて回答をします。相手の発する内容を聞き取れずに、自分の言いたいことだけを言うと会話や人間関係がぎくしゃくしたものになる可能性があります。

「聞き取る力」をトレーニングする方法として、学校の教科書に書かれている文章を大人や周りの人が読み上げ、その音声情報を頼りに情景をイメージすることや、内容を記憶することに取り組むと良いでしょう。
ご自宅にある国語の問題集を同様に活用することもお勧めします。

また、脳内での情報処理のメカニズムでは、目で見て読むことに比べ、耳から聞くことのほうが、脳への負担が軽減されるので情報が脳に入りやすいというメリットがあります。

  • 目から得る文字情報は一旦脳内で音声に変換されて言語として理解する
  • 耳から得る情報は音声情報として直接的に言語として理解する

一方、「耳から聞くこと」のデメリットとしては、自分で返り読みができないため、脳内の情報処理において高い負荷がかかるという点があります。また、相手の話すスピードに依存するので、聞き取る力のトレーニングをする際は、読み手は平均的なスピードで話すことを意識すると良いでしょう。

聞き取る力


【つまずき】

こどもの「聞き取る力」を育むにあたり、「つまずき」が気になる方も多いでしょう。ここでは「つまずき」について、一般社団法人ワーキングメモリ教育推進協会理事の野瀨さんが解説をします。

耳から聞く言葉はその場ですぐに消えてしまうので、聞いた言葉を頭の中で覚えておかないとその音声の意味を考え、理解することができません。また、その中の言葉を学習することもできません。そのため、音声を正確に聞き取り、聞き取った音声をしばらく頭の中で覚えておき、同じ音声で真似をすることができる力、つまり、「聞き取る力」が、小学校入学後の子どもの読む・書くなどの言語学習の基盤となります。

「音声情報を正確に聞き取り、聞き取った音声をしばらく頭の中で覚えておき、同じ音声で真似できること」は、「ワーキングメモリ(Working Memory)」のはたらきによるものです。

幼児期の子どもは、耳から聞いた音声から直接言葉を習得します。その際、その音声はいったんワーキングメモリに保持されます。言葉の数がまだ 少ない子どもにとっては、耳にする多くの言葉を知らない可能性が大きいです。

ことば・語彙が少ないこと、読解をしていても内容理解ができていないことが気になる場合、「聞く力」に立ち返り、音声による学習をすると良いでしょう。しりとりや読み聞かせを通して、その言葉や内容を記憶し理解しているかを確認するなど、ワーキングメモリにはたらきかけることもひとつのアプローチです。

時には「目に頼る読み方」を「耳に頼る読み方」に変えることで、新たな気づきが得られるでしょう。耳に頼ることは、返り読みができないため、脳内での情報処理の観点からも高い負荷がかかります。

<参照>
こそだてまっぷ Gakken「聞き取る力」🔗

聞き取る力


【トレーニング・レッスン】

そろばんの世界では「読み上げ算」という「数字を他人に読み上げてもらってする計算」があります。そろばんの世界のように高速でなくとも、簡単な暗算をすることだけでも、情報を聞き取り、脳内で処理をするというワーキングメモリにはたらきかける良いトレーニングです。

算数の文章題を、目で読まずに音声で聞き取って解いてみることもお勧めします。但し、このトレーニングでは実学年より低い学年の内容で取り組むと良いでしょう。音声からの情報をイメージしながら処理する(解く)ことになり、良い復習となるでしょう。

<お薦めのレッスン>
脳内のメカニズムにはたらきかけるレッスンや教材をご紹介します。いずれも自宅から参加できます。

<テスト>

<法人様向けサービス>

Contactよりお問い合わせください。

聞き取る力


【学習アドバイス・ご相談】

一般社団法人ワーキングメモリ教育推進協会理事 / 株式会社インフィニットマインド上級インストラクターの野瀨まなみが、お子さまの「聞き取る力」に関するご相談に個別に対応します。

30分 5,500円(税込)

ご相談担当

一般社団法人ワーキングメモリ教育推進協会理事
株式会社インフィニットマインド上級インストラクター

上級インストラクターの野瀨です。
お子さまの“学びの個性”を把握・理解し、個性に合わせた教育を行えば、 学習の筋道や速さが異なっていても、お子さまは、学びの喜びを感じ、自信を持って学習の道を歩み、ゴールに到達することができます。
お子さまの「聞き取る力」を育む具体的な学習のアプローチなどご相談事はお気軽にお問い合わせください。